ベストセラー小説の書き方/ディーン・R・クーンツ
★★★☆☆
アメリカでベストセラー作家として君臨しているらしいディーンさんの著書の邦訳。
ミステリーやSFを小馬鹿にしているような表現が見受けられた。
自身は一般小説で累計2500万部以上を売り上げている自負があるのだろう。
私は一冊も読んだことはないが…
正直小説を読むなら原語で読んだ方がいいと思っている(グレッグ・イーガンの和訳を見て下手くそすぎて辟易している)から、そのうち原語のものを買って読んでみよう。
和訳の過程で訳者の解釈が介在するから、原作家の小説を読んだことにはならないと思っている。
本の内容としては、プロの作家としていかに努力してきたかについてが赤裸々に語られていてとても面白かった。
とにかく読みまくって書きまくれ、という部分は、「テキトーに文章を書いてテキトーにデビューできたらいいかな」と、ものすごい安直な考えを持っていた私には響くものだった。そんな甘いものではないな。
付録「読んで、読んで、読みまくれ」についていた本はほとんど読んだことなかったので、ちょいちょい手を出してみよう。ただし、英語の本なのでものすごく時間がかかるだろう。
具体的に、話を書き始めたいと思った時に筆者が何をやっているのかを書いてくれていたのがとてもよかった。自分もこうやって話を考えてみようと、今すぐ思わせてくれるものだった。これならできる。
冒頭にも書いたが、ミステリーやSFなどのジャンル小説、および純文学小説を小馬鹿にしているように感じた。
「売れればそれでいい」と筆者は考えているようだ。
私も、売れなければ職業小説家として大した価値はないと思っている。
しかし、ミステリー、SF、純文学の中には「発行部数は伸びなかったが芸術作品としては優れている」ものが多々あると考えている。
純文学などは一般大衆からすれば面白みのないものもあろうし、ミステリー・SFに関しても、それに精通した人間にしかわからない面白みもあるかもしれない。
そうだとしても、それらの単なる「一般大衆向け」を超えた価値というのは存在すると私は考えているので、売り上げが上がらなかった=作品として価値がない、とは言い切れないと思う。
そういうわけで、筆者の意見に完全に同意することはないものの、作家としての心構え、作家という職業のつらさ、具体的に筆者がストーリーを立ち上げる手法などを学ぶ上で、非常に参考になる本だった。
ちょっとでも作家になろうという気がある人は読むべき本だと思う。作家はそんなに甘くないぞ(どの口が言う)。