人工知能と経済の未来/井上智洋
★★★☆☆
本書によると、あと20年ぐらいすれば人工知能が人類の頭脳レベルに達して、まったく新しい経済体制に移行せざるを得なくなるらしい。
表題、というか帯に書かれている「AI→BI」(AIによる産業革命→ベーシックインカム導入の必要性)の話は最終章あたりに出てくる話に過ぎない。
この本のいいところは前半に、経済学者の論文などを引用しながら、具体的な学説を教えてくれるところである。
面白い。
色々な知識が増える。
ということで「教養を身に付けたい」人々の心を前半でグッと掴んでくれている。
しかし、中盤の印象があまりない。
そして後半、最終章あたりはひたすら筆者の考えが述べられる。
まあ、新書なんだし、筆者の考えをひたすら述べて、世の中に示唆を与えてくれるなら、それは筆者としてやるべきことをやったという気になるだろう。
ただ、前半が学者の議論を引用しながらそこそこ精緻な議論をしていたように見えるだけに、後半はなんだか雑な印象を受ける。
本当にその通りなのか、文面だけを読めば納得はできた。実際、私は読みながら、たしかにそうだよな、それならそうなるよな、うん。と納得しかけていた。
しかしBI導入の際に起こる摩擦のことなど、様々な具体的な問題を捨象して、数字上はこれで問題ない、という結論に落ち着こうとしていたのが少し残念だったように思う。
そりゃ数字上はその通りなのだし、筆者の条件設定のもとならその通りに運ぶようにも思えるのだが、それ以外のことを捨象しすぎてはいないだろうか、そう思わずにはいられないのだった。