ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎
★★★★☆
これはとても面白い小説だった。
660ページぐらいでそれなりのボリュームだったけれど、徹夜で読みきってしまった。
内容はケネディ大統領暗殺をモチーフにした話で、首相暗殺犯に仕立て上げられた主人公が”大きな何者か”から逃げ回る話である。
結局黒幕の明記などはないし、大勝利で終わるというわけでもない。
ただし完全なバッドエンドでもない。
伊坂幸太郎の小説は中学生の時に「陽気なギャングが地球を回す」を読んだことがある。それもとても面白かった。
彼の小説のすごいところは、複数の登場人物のストーリーを作り、それを結末に向けて鮮やかに絡ませ、ありえなさそうな連関を、結局はそれが必然であったかのように締めくくるところである。
しかも、登場人物が他の登場人物と埋もれるということがない。
いったい伊坂先生の頭の中はどうなっているのだろう。
並行処理能力が異常に高いとしか思えない。
もし凡人が伊坂先生風の小説を書いたなら、作家が無理に複数のストーリーを絡ませた跡が見えて興ざめするようなものが仕上がるだろう。登場人物にしたって、誰が誰だかわからない、いてもいなくても変わらないようなつまらない人物が舞台を動いているだけに見えるだろう。
ゴールデンスランバーはとにかく先が気になる話だった。
主人公は一息つく暇もなく毎回ピンチに陥るので、読者としても早く安心したくて、続きを読んでしまう。そして気づいたら読み終わっていた。
この感覚は超人気ドラマ「24」を観たときと似ていた。あのドラマも、主人公がどんどんとピンチにはまって抜け出せないから、早く安心したくて続きを見てしまった(おかげで1週間が丸々潰れた)。もしかしたらゴールデンスランバーでも意識していたのかもしれない。
映画版も見たけれど、小説の方が面白かったかな。映画は映画で上手く省略していたり話を簡略にしていたりと、ちゃんとした出来だった。
ただ小説の方が絶望感がすごくて、心に残るものがあった。
そんなこんなで、ゴールデンスランバー、とても面白い小説でした。
友達にガンガン勧めていきたいレベル。