フリーター、家を買う/有川浩
★★★☆☆
面白かった。
けれども、タイトルはちょっと詐欺かなと笑
前半はひたすら母の精神病と、それに不理解な父にイライラするパート
後半はもはやフリーターではない主人公がガンガン活躍していくパート
といった感じでした。
つまるところ、主人公がずっとフリーターというわけではない。
個人的には「NHKにようこそ」的なふざけた話かと思っていたら、予想以上に真面目な話だったという印象。
軽い気持ちで読み始めたら、前半の家庭崩壊については重すぎるし、後半はもはや主人公がフリーターではないし、というある種タイトル詐欺であった。
しかしそれを補って余りある面白さ。
文章が読み易い。
ひたすら前に前に読み進めたくなる不思議な魅力。
「文章の推進力」というのはこういうことか。
さらに、登場人物全員のキャラが立っている。
強烈な個性というほどではないけれども、ああこういう人いるよねとリアルに感じるレベル。
ひたすらリアルであったと思う。
父親の誠一に関しては嫌〜〜〜な印象ばかりが残ったが、それを補う二面性を作中で見せてくれた。
正直、主人公がフリーターでなくなってからは、読んでいて話の魅力が半減したと感じた。
主人公がフリーターとしてもっと奮闘する話を見たいところではあった。
私としては、クズだったはずの主人公がいつのまにかめちゃくちゃしっかりしたやつになっていて、なんだか悲しい気分になるのである。
「ああ、あいつも大人になっちまったんだな」という。自分が取り残されたような。
しかしそれを補ってあまりあるストーリー展開で、十分なカタルシスを与えてくれた。
ベストセラーになるのもうなずける話であった。