僕の感想文

筆者の主観です。備忘録とか面白そうなこととか。

分断社会ニッポン 感想

分断社会ニッポン(朝日新書
井手栄策 佐藤優 前原誠司
★★★☆☆


概要(カバーより)
「過酷な競争によって身も心も疲れ果てた人々であふれる格差大国ニッポン。
弱った者が自分よりさらに弱い者を非難する。
世代間格差やシルバー民主主義にわき起こる怨嗟の声。
「ゆがんだルサンチマン」が日本社会を覆い尽くそうとしている。
傍観すること、無関心であること―
それは歴史の加害者になることにほかならない。
人間の尊厳を守り、社会を崩壊させないために
いま最優先でやるべきことは何か?」

 


井手さんは以下のように議論の重要ポイントをまとめていた。
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1 同一価値労働・同一賃金を柱とする雇用格差、賃金格差の是正
2 賃金カーブの是正、男女がともに働ける社会の基盤整備
3 介護や医療の負担、財言論に捉われない死のあり方等、尊厳ある生の保障
4 児童養護施設の充実、児童虐待の防止、ネグレクトの保護
5 就学前教育、大学教育の負担軽減と質的向上、職業教育・日本版マイスター制度
6 消費税10%増税時のサービス拡充、受益感のいっそうの強化
7 公・共・私のベストミックス、現役世代と高齢者の受益のバランス
8 相続税の強化と教育投資の拡充をセットにした「社会的な相続」
9 地方の共通ニーズを発掘し、地方が主体的に増税できる仕組みの導入
10 配偶者控除配偶者特別控除の見直し、税に左右されない女性の就労実現
11 消費税だけではなく、所得税や資本所得課税も含めた税のベストミックス
12 「行革のための行革」から「必要を満たすための行革」へ
13 現物サービスの給付強化、屈辱の領域・生活保護の最小化
14 経済成長を目的にせず、生活保障の結果に変える
15 「チルドレン・ファースト」を超える「ヒューマン・ファーストの五原則」

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引用ここまで。

 

感想
学者(井手)、作家(佐藤)、政治家(前原)の3人が、日本社会に存在する分断と、それへの対策について対談する形式。
ラディカルな意見や、具体的な政策が出てくるというわけではなかった。
あまり突っ込んだ議論はせず、「今の日本社会はこういう分断があって、それに対してこういう感じで対策していったらいいんじゃないの」という方向性を示すものだった。
佐藤さんが出していたロシアの教育制度は面白かった。日本は東大出身者が政財官学の主要ポストを占めている感があるが、ロシアではそれぞれの分野にそれぞれの分野のトップ大学があるという。
しかし考えてみると、ロシアではさまざまな大学に分かれているところを、日本では東大という一つの大学のさまざまな学部で担っていると考えると悪くない気もする。
学内での交流を通じて社会的エリートが強固に結びつく点は、派閥による権力強化と悪くも言えるし、横断的な協力が可能になると良くも言える。

やたらと就学前教育を推していた気がするけれども、本当に就学前教育っていうのは効果があるものなのだろうか?
その点は疑問で、0~5歳での教育を充実させたところで、将来その子が良い人材になるかはわからない。
その後の不確定要素が強すぎるんじゃないか?幼少期にしっかり教育すれば大丈夫、というのは楽観的に過ぎるのではないか。
就学前教育に関する本を読んでないから、読んでみようと思う。どうなんだろうなあ。
とするとその就学前教育に財源を突っ込むっていうのはあまり賛同しかねる。

この本の特徴はしっかりと財源の話をしていることだった。素晴らしい。
「国はあれやるべきこれやるべき」ってのは馬鹿でも言えるけれど、財源という絶対的な制約が伴う以上、それを抜きにして議論はできない。
当然、理想的な国家像を提案するのは大切だが、財源をどこからどう確保するかの話がなければ、建設的な議論とはいえない。
ということで本書ではしっかりと消費税増税分のいくらをここにまわして、他はこうで、相続税をこうして、としっかりと書いてある。
「赤字の補填」ではなくて「充実」にまわすべきだという議論もよかったと思う。

「無駄なものは無駄なんだから当然削るべき」「ただ必要なものまで削らないように注意すべき」っていう話があったけれど、民主党時代に「2位じゃだめなんですか」って言って必要な研究を切ってなかったですかねぇ…


時々あらわれる安倍政権批判に怪しさを感じつつも、正しい指摘だと思えた。
安倍さんが内閣府に実質2%の経済成長と2020年度の名目GDP600兆円が達成可能だというデータを作らせたという話があった。
もし本当に官僚に非合理的なデータを作らせているんだとすれば相当に独断的でひどいことだ。

地方についても本全体を通してかなり重視していた。

 


正直、対談形式じゃなくてそれぞれの人の考え方をまとまった状態で読みたかったかな、と思った笑
だから今後はこれらの人々(特に佐藤さん)の本を読んでみようと思った。
初感想文だったけどめちゃくちゃとっ散らかってしまった。改善していこう。


以上